大富林道には早朝トレッキングとナイトトレッキングで2回行った。早朝トレッキングの時は、森からはアカショウビンの声、遠くの空にカンムリ鷲らしき鳥なども見れた。道の途中名前がわからない、なぞのカタツムリもいた。殻に毛が生えていた。うーん、何のために・・・
夜の風景は早朝とはまったく変わっていた。林道には外灯などないので、月明かり以外はガイドさんがもつライトだけ。森には朝は聞かなかったいろいろな生き物たちの鳴き声や気配が充満していた。
実は、私は夜の山が好きだ。今はもちろん、好きだからといって一人で夜の山に入ることはないが、昔は車で山に入って、そのまま夜を明かしてくるという事もしていた。夜のなんともいえない雰囲気が好きなのだ。静かだがさまざまな気配を感じ、生命力をそこかしこに感じる。日中は明るいため、眼で見えたものに頼るし、目で見えたものを目標に行動するが、夜の山は、どんなに目を凝らしても真っ暗だ。月もない日は自分の指先さえ見えない。逆に満月の夜は、怖いくらい鮮明に全てが薄水色に見える。そんな景色の中に立ち、耳から入る音と、肌に感じる湿度、鼻に入る獣臭を感覚器で感じると、突然自分が単なる一個の生き物に過ぎないことを実感する。そして、自分が生きているのは、自分の外界にあるものとのつながりゆえであることを、改めて知る。
これは一種の瞑想体験に近いものがある。だから私は人生が行き詰ってきたような感じがしたとき、山に行きたくなるのだ。
さて、今回大富林道のナイトハイクに参加したのは、夜の山に入りたかったのと、蛍観賞をしたかったため。宿泊のラ・ティーダ西表のツアーガイドには、いくつもの多彩なツアーが紹介されているが、そのなかに「地元のおっちゃんといくナイトツアー」とういのと、蛍観賞ツアーというのがあった。それを見て、蛍なんて見たのは小学生の時に目白の椿山荘のホタルディナー以来だと思い出した。つまり自然の景色の中にいる生の蛍はまだ見たことがなかったのだ。
そこで、日中川でカヌーのアクティビティをした後ホテルに戻ってすぐ、ツアー参加を申し込んだ。7時フロント前集合とのことだったので、夕食の時間を早めてもらった。
ホテルに、とても愛想のいい優しそうなおっちゃんが来てくれて、他のツアー客とともに車に乗り込んだ。またデコボコ道走り、途中からは徒歩。その前におっちゃんから「絶対草むらに入らないこと」と厳重注意された。その理由はまもなくわかった。
ハブである。人が3人横に並んだら道幅一杯になる林道だが、一応舗装はされているので、道に沿っている限り安全だ。しかしその道の両脇の雑草の陰に、ハブが待機しているのだ。カエルがその道を通るのを待ち構えているのだろいう。道すがら3匹のハブに遭遇した。
うーん、さすが西表だ・・・と思いつつ坂を上がり続けると道沿いの森の暗闇の中に、小さな青い光がちらちら見え始めた。蛍だ。
西表島では蛍は3,4月のみ見れるものだそうで、それも時間は7時半から8時までと決まっているという。この時期、この時間を過ぎると、蛍の光はいっせいに消える。
さすがに蛍の光は写真に撮れなかったが、ちかちかと点滅している光と、点滅しない光と2種類あることを教えてもらい、みんなで森に目を凝らし歓声を上げた。
ほんの一時だけだが、目の前の暗闇前後左右、どこかしこにも蛍が飛んでいた。とても不思議な気分になった。自分が目眩を起こして目の前がちかちかしながら、暗闇で身が浮く感じがした。
蛍の時間も終わり、おっちゃんが帰り道もいろいろ話をしてくれた。西表島の水源であるという川をみんなで覗きこんだとき「あ、あそこにエビがいるよ」と教えてくれたが、どんなに見ても暗い川と水だ。おっちゃんはそんな水の中にいる小さなエビを、数メートル上の橋から歩きながら発見してしまう。すごい目だ。
帰りの車では、数日前に他のツアー客を乗せていたときにヤマネコに遭遇したときのことを話してくれ、私たちも見れないものかと一同期待したが、残念ながらその夜は会えなかった。しかし、その期待感で帰りの車はとても楽しいものになり、おっちゃんの盛り上げ上手に拍手だ。
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