最近観た映画でとても印象に残ったのが「ロング・エンゲージメント」です。あの「アメリ」の監督ジャン=ピエール・ジュネと女優オドレイ・トトゥの作品で第一次世界大戦の頃のフランスが舞台になっています。足の不自由な女性マチルド(オドレイ・トトゥ)は戦争に行った幼馴染で婚約者であるマネクの帰りを故郷で待っていますが、彼が戦死したという訃報が届きます。常に死と隣り合わせの最前線にいたマネクは、マチルドに会いたくなり、ある日戦線を離脱するためにわざと手に怪我を負います。しかし、故意に負傷をした罪により、マネクは死刑を宣告され、他の同罪の5人の男とともに、武器も食料もない状態で、激戦中の敵軍との中間地帯に放り出されたのです。マネクが死ぬところを見た人はだれもいませんが、マネクはそれ以来消息を絶ちます。その状況を聞いたマチルドは「マネクは生きている」と直感し、マネクとともにいたほかの4人の男たちの死の状況や消息を知ろうと、執念の追跡を始めます。その過程でさまざまな隠されていた事実が浮上し、マネクに続く細い希望の糸がかろうじて続いていき・・・というストーリーです。
はっきり言って、感動します。泣きます。そして最後には心から平穏な気持ちになれます。
「アメリ」のようなキュートな場面設定や映像の美しさ、人々のユーモアも楽しめる一方で、「普通の人にとっての戦争」が淡々と描かれています。その描写は激しく残酷であるにもかかわらず、静かな印象があり、戦争体験のリアルさを感じました。
この映画をなぜこのブログで紹介するかというと、食べ物が非常に印象的に描かれているシーンがあるのです。それは、マネクが中間地帯に放り出される前に、軍の「調達の鬼」と呼ばれる男セレスタン・プーと交わす短いやりとりです。セレスタンは非常時であってもどこからか食べ物や備品を調達してくる達人で、彼は処刑前夜マネクに「何か欲しいものはないか?」と聞きます。その時マネクが「蜂蜜をつけたパンとココアが欲しい」と言うと、「親を殺してでも見つけてくる」と約束して出て行き、その15分後美味しそうな蜂蜜つきのパンとココアを差し出します。
5人の男たちはそれぞれ、「ただ戦場から愛する人のもとへ帰りたい」と願っただけで、死刑を宣告された人たちで、同じ兵士たちの間からも同情の目で見られています。そのなかでもセレスタンは、彼らに何とかして最後の願いを叶えてやろうとする、心の暖かさをもつ人だったのです。
また、最後に食べるものとして、マネクが望んだのが、酒でもタバコでもソーセージでもなく、蜂蜜つきパンとココアだったという点も、マネクがどういう性格の男の子(まだ19歳)かがよく伝わります。彼はただ、平凡な温かい毎日の家庭の味を望んだのです。こういうピュアで平和な心の持ち主のマネクへの、マチルドの一途な愛。映画をとおして、心が洗われていく感じすらしました。
他にも映画では、マチルドの家に、重要な情報を携えてセレスタンがやってきた時に叔母さんが出した料理も、素朴なフランスの家庭料理ぽくてほのぼのしました。
というわけで、素朴な毎日のパンである、全粒粉入り食パンを作ってみました。映画ではパンは楕円形だったので、たぶんフランスの田舎パン(カンパーニュ)かもしれませんが、今回は食パンをつくりました。作り方はブログ別館「ダーリンのパン焼き日記」にアップしてありますので見てくださいね。
毎日食べたいものを食べたいように料理し、愛する人に食べてもらえる平和のありがたさ。これに改めて感謝せずにいられません。
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